パッキンの壊れた蛇口のように、だらだらと修正の入るカタログの改訂をようやく仕上げて、
後は印刷屋さんの営業に渡せばおしまいだと、日も暮れた冬の第一京浜をひた走る。
走り始めて10分あまり、路肩に寄せて後輪をはずしたロードレーサーが一台。
帰宅時間ともかさなり交通量を増した道でその修理の仕方は危ないよと
声をかけると、交換したチューブにさっぱり空気が入らないらしい。
そのリアホイールを貸してみなと、バルブに空気を入れてみるがまるで手ごたえがない。
こりゃポンプのせいじゃないよ。ヤっちゃったね、タイヤセットするときにチューブをはさんだに違いない。
よくよく見れば新品だろうそのチューブにぱっくりと5mmほどの切れた穴。
ここは仕方ない、お互い様だ、僕のスペアチューブを譲ることにした。
こういうときはさっと渡して名前も告げずに立ち去るのがパターンってものかもしれないが
彼は、途方にくれた表情を一変させ、ありがとうございますと財布からお金を取りだす。
あ、そうか、「税込1050」って値札ついた箱のまま渡したのは僕だった。
わざとじゃないよ、いただいときましょう。
お礼のつもりか500円玉が足されていたが、1000円札だけもらって立ち去る。
そういえば入稿が迫ってるのだ。しかもよく考えてみればこっちもあと家路は20km近いのだ。
パンクしたらどぼじようと、どきどきしたがパンクの神様も今日は穏やか。
我が家も程近い、いつものお店までたどり着く。
早めにスペアを買っとかないとと、1050円のチューブをひとつレジへ。
「お会計840円です。」
あ、クラブ員割引でした。
ま160円は親切代ってことでよしとしましょう。
だってこの寒空のパンク修理は泣いちゃうもんね。
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