おっ母。俺財布落としたよ。おっ母がこさえて送ってくれた今月の残りの生活費と、免許やらカードやら、全部入ってたよ。新宿のど真ん中で、変な人に拾われて、ゆすられたりしたらどうしよう。バンドのオーディションもうまぐいかねっし。おら、田舎帰ってもいいがなあ?
レース明けの月曜は、世の中的に下期突入の、学校なら衣替えの10月1日。天気予報も芳しくないし、スーツは男の普段着だとウルトラマン団次朗も言っていたのでおとなしく電車で往復。あけて10月2日。風邪による症状も幾分回復してきた今朝は、曇りの予報をアテにして自転車でGO。と思ったら中野を過ぎて小雨。水滴はグラスについて取れないし、交通量の多い都会のアスファルトは油が浮いてすべるし、危ないことこの上なし。いつにもまして安全運転で走っていると、新宿西口手前成子天神下の路上に、黒い財布を発見!。二つ折りを開いてみれば、札入れの端からは高額紙幣が顔を覗かせ、カード入れには現代人が一通り入れているであろうキャッシュカード類が並んでいる。
落とし主は かなりがっくしされているに違いない。紛失届けを警察に出すかもしれない。小銭ならアレをアレするにしても、これでは交番に届けてあげるのが人の道というものでありましょう。エライぞ、オレ。かっくいいぞ、オレ。腹が出ているぞ、オレ。とアタマのなかでリフレインしたので、周囲を見渡したが交番はなく、通りの反対側に新宿西署がどーんと構えているのは承知なのだが、ここに届けていては窓口たらいまわしにされそうで時間の無駄なので、このまま通り沿いの代々木駅前の交番に、こうばんわー。若いおまわりさんが財布を開いて中身をチェック。お金は万札1枚、五千円札1枚に小銭で〆て¥15,415-なり。カード入れには免許証、銀行のカードにクレジットカード、ビデオ屋の会員証に音楽系の専門学校の学生証、、、。都会で暮らす彼の生活に不可欠なものが凝縮されていた。ここまで身元の特定できるものが揃っていれば、僕にはもう用はないでしょう。お名前は?といわれても名乗るほどのものではと、立ち去ろうとしたが、さすがに高額拾得物ということで、万が一届出がなかったときのための「有権」扱いで、書類が出来上がるまで交番で付き合わされた。危うく仕事におくれるとこでしたが。
おっかあ。落とした財布出てきたよ。誰か優しい人が拾ってくれたよ。東京も捨てだもんでねぇな。おら、やっぱりがんばって有名になっておっかあに楽させてやっからな。
と彼が言うのかどうか知らないが(勝手に想像しすぎ)、無事手元に戻るといいですが。
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