1981年7月31日、高校一年生の僕は住んでいる下関を遠く離れて秋田にいた。当時所属していた吹奏楽部が、第5回目の開催となる「全国高等学校総合文化祭」に参加するためだ。前日から新幹線で東京へ、山手線で上野へ乗り継いだあと、寝台で秋田へ。東北=涼しい、という先入観でいっぱいの田舎の少年たちは、初めて降り立った場所がフェーン現象で異常に暑くなっていることで、妙な驚きと興奮に浸っていた。
宿へ行き荷物を降ろし、会場へ向かい、軽く様子を見た後、街中の喫茶店に入って昼食を摂って、お昼に外へ出てみると、暗い!。空は確かに快晴なのに、暗いのである。薄暗い店からいきなり外へ出たために、瞳孔の調整が追いついていないためかと思ったが、やはり暗い。よくよく思い出してみると、たしか今朝宿で見たニュースで今日は日食だと言っていた。ちょうど13時過ぎあたりがピークで、目を細めて太陽を見てみれば、なるほど大きく三日月のように欠けていた。西日本より、北日本のほうが欠け方も大きかったらしく、こんなときに秋田に来ていて得したなと、なかなか貴重な体験だと悦に入っていた。そんな記憶から28年。22日は皆既日食だそうで。
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