「本を読もう」と決めたので、直木賞くらいは読まないと。直木賞取ったって言うんで読んでみるのは、景山民夫の『遠い海から来たCOO』以来だから、23年ぶりだな。
池井戸潤の「下町ロケット」。まずまず面白かった。矢継ぎ早に展開されるストーリー。いろいろな葛藤を抱えつつ、気持ちに正直な登場人物。あこぎな大企業vs実直な中小企業、そして第三者的に冷めた目の銀行といった図式は判官びいきな、日本人の感情に入り込んでくる。ま、離婚した妻の存在とか、気難しい年頃の娘、といったエピソードは、少し余計(描ききれてない)な気もしたが。
で。一冊だけ読んでどうこう言うのもナンなので、文庫本でもう一冊、池井戸潤、読んでみた。5話ほど収録された短編。なんだ、作家自身が元銀行マンなのか。下町・・で描かれた、大田区あたりを中心とする下町の中小企業と銀行との関係は、すでにこちらでたくさんのテーマとして登場してくる。貸す、貸さないの審査、銀行内での稟議、さらに社内監査。うまくいかない経営状態の中で奮闘する経営者。下町・・・とちがってこちらは短編なぶんだけ、各エピソードがぶれることなく話がまとまっていて面白かった。
自らが医者である海東尊が、そんな話ばかりであるように、池井戸潤もテーマは一貫して銀行方面。どちらも、人の人生を左右する仕事だけに、ついつい深入りして読んでしまうのだろう。
ずっと井戸田 潤と区別できてなかったくせに、エラそうかな。
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