栗原だより

2月13日 退院！

はなせば長いので、また後日。

2月12日

面談の時間は13時。なので病院には12時に着けばいいことになっている。朝イチで耳鼻科に行った櫂を連れて帰宅した由紀と行き違いに、航を乗せ出発。三連休明けの道はそれなりの混み方で、1時間半あまりかかって病院着。由紀の体調のこともあって（家族に胃腸系の症状があるので）、病棟に入ってそのまま個室に隔離されてしまう。すなわち、お泊り決定。プレイルームにも行けないので、DVDで退屈しのぎ。

2月1日のPETで、確認したい影がある、と言われて、先週8日の髄液検査。いったい今日の面談ではどんなことになるのか、不安を抱えつつ、13時に面談室に呼ばれる。主治医、担当医、担当看護士の三名を前に机を挟んで座る。半年前、白血病の診断を聞いたときと同じ部屋、同じ構図。一人で聞いて耐えられる内容だろうか。

穏やかな表情の主治医の先生から開口一番、「おめでとうございます。よく頑張りました。」。強張っていた方から力が抜けていくのが自分でもよくわかる。良かった。 目の前がクラクラする。そのあと、手元のノートにメモしながら、今までの経過の話、今後の生活の話、将来的な注意の話、細かく説明を受け、由紀から託されていた質問と、私自身の質問をしつつ、面談は終了。

まだまだ書き留めておきたい話は山ほどあるが、それは後日。

15時半に、半年間胸に埋まっていたCVを抜く処置をして、身軽になった航を部屋で抱きしめる。 確かに元気にはなったが、骨折などと違って、ギブスが取れたら、とか、リハビリでこれができたら、とか、具体的に目に見える何かがあるわけではないし、見た目でいえば、まだ髪の毛も抜けたまま、なにか実感が湧かない。医者にしてみれば、想定通りの経過だったのかもしれないが、僕自身、年明けからのこの急な展開が理解できていないのかも知れない。しばらくして、抜いたCVを消毒して看護士さんが、CVを入れていた巾着とともに持ってきた。ツールで配っているサコッシュ。ドーピングのミソはついたが、ガンを克服したランスとおぼしき選手がTTバイクで駆け抜けるイラスト部分をを切ってミシンがけして僕がつくった巾着。願いが通じた、と思った。

一気に何かが襲ってきて、頭痛、肩コリが激しい。付き添いようの簡易ベッドを受け取ってすぐ、横になる。

8時前には灯りを消して寝る。航が綿棒での耳掃除をせがむので、掃除（といいつつなでてやるだけ）してるとすぐすーすーと寝息を立てはじめる。「CVがないから、寝る向きを気にしなくていいね」と言っていた言葉通り、こちらに体を向けて。個室の並びからは、子供の泣き声が聞こえてくる。航も最初はこうして泣きわめいていたし、本当に世話が焼けた。綿棒で寝かしつけて、こっそり帰っていたことを、昨日のことのように思い出す。

一時間ほどたったころ、航の泣き声で目が覚める。やっぱりさびしいようだ。ママ、ママと静かに泣いている。ベッドから降ろして、狭い簡易ベッドで添い寝してやっているうちに、泣き疲れて寝た。と思ったら、夜なかに起きて、「ベッドに戻る」。甘ったれで気まぐれな長男だな、まったく。 

2月11日

外泊できても、外にもいけないんじゃ、そりゃ息もつまろうってもんだ。しかも、もう治療は終わっていて、航からすれば、元気そのものなのだ。
明日の病院行きに先だって15時に車を借りてきて、近所の踏切めぐりのドライブに連れ出す。何回、この踏切まわったことか。現物を見てまた新たな刺激を受けたか、病院でお世話になった看護士さんに渡すんだという絵を、帰宅後一生懸命に描く航。彼なりの感謝の気持ちが、その精緻な仕上がりに感じられる。

由紀は念のため、明日の病院行きはなし。面談なので、本当なら揃っていきたいところだが、やむを得ず。折からの雪予報も気にかかる。何もなく、CVを抜くことになると、病院に一泊。他の子が外泊で大部屋にひとり、になった場合、さびしくて寝れないので、個室で親が付き添ってもOKとのこと。僕が付き添うことになるので、外泊用の準備をして床に着く。雪の予報も気になる。とにかく、何もありませんように願うのみ。

2月10日

車があまり得意でないのか、疲れが来たか、由紀が胃の調子が悪いという。こちらもなかなか外に出れずに、体がなまる、というかだるい。気分的にも決して健全ではないし、なんとなく家の中がどんよりしてる気がする。仕事も気になるし、ついイライラしてしまう。

夕方、じわっと伸びた髪を、バリカンですっきり。航の入院直後に、副作用で抜けていく髪の毛を気にしないでくれるよう、父親もボウズにしたのだが、すっかりなじんで、少しでも伸びてくると切りたくなる。小児がんの子供たちはみな、髪が抜けていて、男の子はまだしも、女の子などは、ある程度の年齢になると、少なからず辛いだろう。 こんな状況を見ていると、「ボウズ＝謝罪」とか、罰、とかの先日の騒ぎなど、とても嫌な空気を感じる。あれはいわゆる「ギョーカイ」のごめんなさい、なのだ。「ギョーカイ」の切り売りで金儲けするのはもういい加減にしてほしいな。

航が踏切見に行きたいというので、車を一日前倒しにして明日借りることにする。この数カ月、いったい何回車借りたんだろう。 

2月9日

櫂のほうが、鼻水がひどいので（寒さのたびにぶり返す）、耳鼻科へ。あんまり長居はしたくないので、早い順番を取るために朝一番で受け付けに行く。7時半過ぎの空気は異常に冷たいが、甲斐あって、一番。診察は8時20分から。いったん帰宅して櫂を抱っこして、とんぼ返りで医者へ行く途中、ひばりヶ丘の踏切手前で50円玉発見。余裕で写真が撮れるくらい踏切は開かずに、電車が上り、下り、また上り、と過ぎ去るウチに無駄に時間は過ぎて行って、病院には20分にやや遅れてしまい、せっかく一番取ったのに、後回しになるし、お医者さんからは、もっと早く連れてこれないの！とか、中耳炎になるわよ、とか怒られるし、びみょーに、やな気分。いや、櫂にはすまないな。

航はひたすらプラレールやら、どうぶつみきやら。気が向けば絵を描いたり（踏切だが）。部屋の中で走りまわったりすると、転びはしないかとヒヤヒヤするが、一時期は立ち上がれないくらい弱っていたことを思うと、回復を喜ぶ方が素直だろう。早く外を走りまわりたいにきまってるし。 

2月8日

4人で病院へ。櫂と私は面会控室で待つ。

由紀と 一緒に病室に入った航はまず髄液検査。その後、MRIの順番待ち。MRIは基本的に外来優先なのだそうで、運が悪いとなかなか順番が来ない。今日はその運が悪い日、のようで、ようやく16時前に呼ばれる。航はもう、睡眠薬なしでMRIを受けられるので、終わってすぐに帰宅準備。レンタカーなので、帰宅時間が気になるが、これならまずまず余裕で帰れる時間で安心。

先週、念には念をで、PETを受けたおかげで、「疑わしい」影が見つかったわけで、落ち着かないが、今日こうして再検査で詳しく調べることになったのだから、良しとしなければ。

このまま週末はまた自宅で過ごす。というか、一月末から、ほとんど帰宅している。退院が待ち遠しい。

2月7日

航が在宅なので櫂は保育に行かない。ということは会社に遅れていく理由がないので、定時前に出社するべく早めに出発。しかし、寒さのために負荷も上がらず、スピードも乗らず、そのくせ大原で10円拾ってきっちり写真撮ったりで、どんどんタイムロス。おまけに大田区入ったころからもよおした尿意を我慢しきれずに、ファミマに駆け込み安心かと思ったら、大抵こんな時は先客がいるもので、冷や汗もので用を足し、結局ぎりぎりに到着。冬場のコーヒーは要注意だな。

午後は二時過ぎから打ち合わせ。予想の範囲だが、長引いて、5時半に終わって、これまた麻布でトイレに。やっぱりコーヒー。明日の病院行きのために車を借りる予定なので、大急ぎで帰って着替えて閉店間際のレンタカー屋に駆け込む。後部座席のチビ二人の座席をセットして準備完了。

 

とにかく明日の検査が何でもないことを祈る。

2月6日

あつものに懲りてなますを吹く、というが、今日の天気予報はまさにそんな感じ。朝起きて恐る恐る外を見れば、うっすらと白いものの、未明から積ってきた、という感じではない。ただ14日の場合、降り始めが9時くらいだったにも関わらずのドカ雪だったので安心はできない。我が家は出てすぐがキツイ坂道なのと、同じ斜面沿いに続く向こうの造成地は、切りたった高いコンクリートの壁が作る日陰でしぶとく雪が残るため、表の通りに雪の影響がなかったとしても、そこにたどり着くこと自体が不可能になりかねないのだ。

前回のほどの降りにはならなさそうであったが、 念のため午前中のうちに、県道36号に出るまでの道の雪かき。ワイドショーでは、子供のように大雪を期待するかの様な大げさなレポートも、だんだんトーンダウンしてきて、結局午後にはほとんど雨となり、積雪の心配はなくなった。明日は晴れるようだし、金曜の病院行きもひとまず安心。検査の不安も、晴れてくれるように願うしかない。

 

2月5日

ことわりはいってあるものの、会社を飛び石で休む日々は気後れする。櫂を保育所に連れて行かない日くらいは、まともな時間に出勤しなくてはと、早めに家を出たつもりが、乗った電車がそのままストップ。架線の故障確認だとかで、しばらくして隣の保谷まですすんで、また停車すること十数分。その間に由紀からのメールで、山手線も止まっているから、練馬から大江戸線に乗り換えたほうが得策だとかということらしいのだが、乗ってしまった西武線は急行だから、練馬には停まらねぇよ、などと逡巡しているうち、どうにか全部動いてくれることになって、いつも通り池袋で湘南新宿ラインに乗り換えたものの、もろもろの影響で乱れに乱れて、結局、櫂を預けてごめんね時間の9時半に会社に着いた。

今日も今日とて、不確定な仕事に振り回されつつ、検査を前倒しにしてもらったので、金曜は出社しますよ、なんて話していた矢先に、先週のPETの結果が出ていて、不確定だが怪しい影が出ているとの連絡が病院から入った、と由紀から連絡。やっぱり金曜も病院行きになってしまった。落ち着かない気分のまま、午後はまた恵比寿に寄って打ち合わせをして帰宅。明日は病院に行くことはなくなったのだが、そのまま休暇を取ることにしてある。雪も積るらしいし。先日のようなドカ雪だとすると、今度は金曜の病院行きが大変だ。 

2月4日

月曜日はまたまた病院。昨夜借りておいた車で、8時過ぎに出発。じりじりと混みながら、9時半過ぎに病院。水曜日にドカ雪予報が出ているのだが、今の予定では、その水曜にももう一度病院に来ることになっていて、かなりヤバい。由紀が主治医に掛け合って、水曜にやる予定の検査を前倒しにしてもらうことになり、当初の予定よりは、今日の帰宅が遅くなったものの、心配はひとつ消えた。

航と由紀が検査やら何やらの間、こちらは控室で櫂の相手。ここの控室は、血液腫瘍科の病棟と、新生児・未熟児病棟の両方の面会者（ほとんど家族）が来る場所。すっかり顔なじみになった同じ血液腫瘍科の皆さんはいいのだが、新生児のほうのご家族がいる前で、元気な櫂の相手をしている状態は、複雑な気持ち。今日で退院ですといって明るい表情の方もいれば、入院初日の所在無げな方もいる。

帰宅は夕方7時過ぎ。24時間で返すはずだったレンタカーはやむを得ず、1時間延長。もうすっかり顔なじみになってしまった。